いつの間にか夏の暑さもすっかり遠ざかり、日に日に秋らしさが増してきた9月中旬。
「涼しくなると、ツーリング中にも温かい麺料理を食べたくなるんだよなぁ」と思いたち、山梨県に走りに行くことにしました。
目当ては山梨の郷土料理「ほうとう」です!
「ほうとう」とは?
「ほうとう」とは、簡単に言ってしまえば「幅広で分厚いうどんを入れた煮込み料理」といったイメージのもの。

一般的な麺料理のように「麺を茹でて、別で作っておいた汁(スープ)と合わせる」といった作り方ではなく、汁に生麺をそのまま入れて煮込んでしまうのが普通です。

打ち粉も一緒に煮込むことになるので、汁には少しとろみがついていて、食べれば体もポカポカ。まさに、寒い時期のツーリングにはもってこいの麺料理なのです。
ちなみに「ほうとう」の語源には諸説あるのですが、一般的には「中国から伝わった『餺飥(はくたく)』という言葉が訛った」という説が有力です。
別の説としては「武田信玄が陣中食として採用し、伝家の宝刀で麺を切ったことに由来する」というものもあって面白いのですが…。どうやらこちらは有力ではないようです。
どの店で食べるか? その選択肢は膨大
ほうとうは山梨の郷土料理であり観光客にも人気なので、提供しているお店は山ほどあります。有名なところでいうと、以下の2大チェーンですね。
筆者(MOTO-LOGUE編集長・齋藤)はどちらも利用したことがあり、この2大チェーンなら間違いなく美味しいというのも知っているのですが…。
今回は「まだ訪れたことがない店で味わいたい!」と思い、このお店を目指すことにしました。
御坂峠(みさかとうげ)の旧道にある『天下茶屋』というお店です。
地図を見ればわかると思うのですが、現在、御坂峠は国道137号線の新御坂トンネルによって一気に駆け抜けることができます。しかしトンネルの東側には旧道(峠越えルート)も健在で、旅情を感じるのなら旧道の方がおすすめ。
僕はかつて道そのものは走ったことがあったのですが、天下茶屋を利用したことはなかったので、今回はこのお店で『ほうとう』を味わうことにしたのです(もちろん、メニューにほうとうがあるのは事前にチェック済みです!)
『御坂みち』で天下茶屋へ
というわけで、あまり天気が良くなかった2026年9月某日。まずは山梨県富士吉田市にある、道の駅・富士吉田にやってきました。
富士吉田には「吉田うどん」という名物もあり、ああ、吉田うどんもいいな…と思ってしまうのですが(大好きなのです)、今回はあくまでも「ほうとうを食べにいく旅」なので、少し休憩して出発。
国道137号で河口湖方面に向かい、さらに笛吹市方面へと北上していくと…

ここ! ここが国道との分岐です! 新御坂トンネルに入る直前のところで、右に分岐があります。
これが県道708号、通称『御坂みち』です。

現在では新御坂トンネルによって、峠越えならぬ「峠抜け」ができるわけですが、昔はこの御坂みちがメインルートだったわけですね。
天下茶屋までは、この分岐地点から約6kmほどです。

当然ながら現在、ほとんどの車は新御坂トンネルを使うので、御坂みちを走るのは「あえてこっちで」という意図がある車・バイクのみ。交通量はかなり少ないです。
舗装の状態はそれほど悪くはないのですが、路面には落ち葉や小石などが多いので、スピードに注意しつつゆっくりと登っていくと…

天下茶屋に到着です!
見るからに歴史を感じる、建物の風情がたまりませんね。まずは建物をじっくりと鑑賞してみるのもおすすめです。
ちなみに、道路を挟んだ向こう側の風景も見事です。
天気が良ければ富士山も望むことができ(この日は曇りだったのでダメでした…)、眼下には河口湖も見えます。
ではでは…「ほうとう」を味わおう!
歴史ある店舗の外観を眺めたら、さっそく入店。
お昼のピークは過ぎた時間だったので店内は空いており、縁側の風情ある席に案内してもらうことができました。

一応メニューは眺めてみますが…。もうすでに心は決まっています。
「きのこほうとう鍋」を注文し、しばし待っていると…やってきました!

おおお、きのこも野菜もたっぷりで、いかにも美味しそう…!
アツアツのやつをフーフーしながら口に運ぶと、きのこと野菜の旨味がじんわりと広がって…美味い! 優しい味わいなのにしっかりと旨味があり、ほうとうのもちっとした食感も食べ応えがあっていい。
これまでにほうとうは何度か食べたことがあるけど、やっぱ美味しいですね。
「武田信玄が陣中食として採用した」という説の真偽はさておき、ツーリング中の昼メシとしては間違いなく最適です。これからもぜひ、定期的に「ほうとうツーリング」は企画したいですね。
食後は太宰治に関する資料を見学
天下茶屋にはかつて多くの文人が訪れたそうですが、なかでも有名なのが太宰治です。
太宰治はここに3か月ほど逗留したことがあり、のちに発表された小説『富嶽百景』は、天下茶屋に滞在した経験が記されているのだとか。
その縁もあって、現在の天下茶屋の2階は『太宰治文学記念室』となっており、天下茶屋と太宰治に関するさまざまな資料が展示してあります。
天下茶屋を利用した人は無料で見学できるとのことだったので、支払いを終えたあとに見学してみることにしました(余談ですが天下茶屋の会計は現金のみなのでご注意ください)
資料室の一角には太宰治が逗留していたころの部屋が再現され、本人が使用していた机や火鉢なども展示してあります。

はたして太宰は、ここでどのような3か月を過ごしていたんでしょうね。
ちなみに太宰治の滞在中、食事として「ほうとう」が出されたこともあったそうですが、初めて料理名を聞いた太宰は「僕のことを言っているのか」と不機嫌になったというエピソードもあるそうです。
これは『放蕩息子』の放蕩だと思った太宰の勘違いだったわけですが、郷土料理だということを知ったあとは好物になったとか。
そんなエピソードを知ると、ここでは案外、明るく楽しい日々を送っていたのではないかという気がしてきます。
おわりに
しばらく見学した後は、御坂隧道を抜けて笛吹市側へと下り、帰途に就くことに。

ちなみにこのトンネルは有形文化財に登録されているそうで、この道の歴史を感じさせますね。

こういった、しっとりと歴史の重みを感じるツーリングは、まさしくソロ向きではないかと思います。
きっかけは「ほうとうが食べたい!」という思いでしたが、今回もいい旅ができました。今回のレポートが「何かツーリングのきっかけはないかなぁ」と思っている方の参考になれば幸いです。


















